当事業について

日本の救急医療における自傷・自殺未遂レジストリの構築に向けて

三宅康史(帝京⼤学医学部救急医学 教授)
福⽥ 吉治(帝京⼤学⼤学院公衆衛⽣学研究科 教授)
⼩林 諭史(いのち⽀える⾃殺対策推進センター)
隅 浩紀(帝京⼤学⼤学院公衆衛⽣学研究科 公衆衛⽣学専攻)

本邦において⾃殺企図や⾃傷⾏為を⾏った傷病者の実態は、その背景を含め詳細に調べられたことはありません。それらの⼤部分が、⾝体的治療とともにその精神科的評価と転院・退院後の持続的ケアを含め、全国に290 か所以上ある救命救急センターに救急隊によって搬送され治療を受けることになっています。各センターで年間50例の⾃殺企図及び⾃傷患者を受け⼊れるとすれば、1年間で15,000例の症例が集まることになります。搬送された症例について各医療機関でその情報を登録し、集積されたデータを経年的に分析することで、今後の国や地⽅⾃治体、⾃殺症例を取り扱う救急医療機関や⾏政窓⼝での⾃殺対策、急性期治療、中期的なケアとフォローアップなどに⼤いに役⽴つことは容易に推察できます。

私たちは、厚⽣労働省、厚⽣労働⼤⾂指定法⼈・⼀般社団法⼈いのち⽀える⾃殺対策推進センター(JSCP)、帝京⼤学⼤学院公衆衛⽣学研究科の協⼒を得て、⽇本臨床救急医学会(JSEM)の事業として、救急医療機関に搬送された⾃殺企図症例の登録制度を構築しそれを運営するための活動を開始しています。2021年度は、収集すべき患者情報の選択、倫理委員会の承諾を得たうえで全国約10か所の救急医療機関における試⾏的な⾃殺企図症例のデータ登録と、その不具合および安全性のチェック、その修正、症例登録による効果の広報とHP(JA-RSA.net)の開設を⾏いました。2022年度はこれを全国展開すべく、新たにJSCPでの⼀括倫理審査、それぞれの参加医療機関での倫理審査を経たうえで、秋以降症例登録を開始する予定です。その進捗情報などはHPで適宜お知らせしてまいります。

ご理解とご協⼒をお願いいたします。

<自傷・自殺未遂レジストリ研究計画書>